遺産分割がもめる原因と対策

遺産分割では、もともとあった相続人間の問題や被相続人に対する思いの違いに、相手方の不信感を招く言動が加わり、遺産分割に対する誤解も重なって、感情的な対立が深刻化し、解決までに時間がかかってしまうことがよくあります。

遺産分割がもめる原因と、遺産分割でもめないための対策について説明します。

複雑な感情

相続人は、被相続人や他の相続人に対してプラスの感情・マイナスの感情など様々な感情を持っています。

また、相続人同士が疎遠であったり、養子縁組などにより想定していなかった相続人がいることもあります。

そのため、遺産分割の際には、些細なきっかけで感情的な対立が深刻化しやすい状況にあります。

もっとも、遺産分割そのものを回避できれば、遺産分割でもめることも少なくなります。

被相続人の生前であれば、遺言により遺産の分け方を決めておくことで、遺言の内容に従って相続人が遺産を取得することになるため、遺産分割そのものを回避することもできます。

遺産分割でもめないためには、遺言書を作成することで遺産分割を回避することが最善の対策になります。

自筆証書遺言の作成についてはこちらのページ、公正証書遺言の作成についてはこちらのページで説明します。

不信感を招く言動

消極的な情報開示

被相続人の預貯金を管理していた相続人が、通帳を他の相続人に見せなかったり、被相続人の預貯金を払い戻していながら、何に使ったのか説明しないようなことがよくあります。

このような情報開示に消極的な姿勢が、他の相続人に不信感を与えることになります。

そこで、被相続人の状況を最も理解している相続人、遺産を管理している相続人は、できる限り早期に遺産などに関する情報を開示することが重要です。

特に、預貯金などについて開示をしないと、遺産を隠そうとしているなどという誤解を招くことがあります。

また、相手方の疑問に対してはできるだけ丁寧に説明することも重要です。

もっとも、相手方が憶測だけで主張していたり、感情的な主張をしているにすぎないこともあります。

説明に納得するかどうかは相手方の問題であるため、丁寧に説明をすれば足り、相手方を納得させる必要まではありません。

一方的な内容の遺産分割協議書

被相続人の預貯金を管理していた相続人が、事前の説明や情報の開示をすることなく、遺産分割協議書を他の相続人に送り、それに署名・押印して返送を求めるようなこともよくあります。

特に、個人企業を手伝っていたり、親の面倒を見てきた相続人は、当然に遺産を多く貰えるはずだとか、長男だからすべて貰えるはずだとか考えがちです。

しかし、遺産分割協議書を送られた相続人は、財産のすべてを明らかにして話し合いで決めるのが筋だと考え、一方的な話には反発するのが通常です。

これに対して、遺産分割協議書を送った相続人は、すぐに署名・押印して送り返すのが当たり前だと考えていることが多く、相互に不信感が蓄積されます。

そのため、他の相続人に対して遺産分割協議書を送るにあたっては、事前に必要な情報を開示して丁寧に説明をしておく必要があります。

弁護士や税理士などの専門家から遺産分割協議書が送られてくることもありますが、必要な情報開示と説明がなく納得できないのであれば、署名・押印する必要はありません。

相手方に対する配慮のない表現

「相手方が遺産を隠している」、「相手方が生前贈与を受けているはずだ」、「相手方が被相続人の預貯金を使い込んでいる」などという主張をするのであれば、それなりの根拠が求められます。

相手方の主張に疑問があれば、疑問に対する回答を求めるのは当然のことですし、一方的に相手方の主張を受け入れる必要はありません。

もっとも、うわさや憶測だけに基づき根拠のない主張、相手方を誹謗中傷するような主張、遺産分割に無関係なプライバシーに関する主張などは、相手方の反発を招き、かえって有害だと考えられます。

そのため、疑問の伝え方や表現には、最低限の相手方への配慮が必要です。

また、相手方が理解してくれるはずだという期待があると、その期待が裏切られた場合、相手方に対して感情的な表現をぶつけてしまうこともあります。

そのため、相手に期待しすぎず、坦々と合理的な解決を心がけることも重要です。

遺産分割に対する誤解

相続人は、遺産分割に対して、実際の遺産分割とは異なる認識を持っていることが多くあります。

遺産分割とは、被相続人の死亡により、共同相続人の共有になっている遺産の共有状態を解消して、各相続人に取得させるための手続きです。

したがって、遺産分割は単に財産を配分するための手続きであり、配分できる財産の対象も限定されています。

ところが、相続人は、遺産分割について、これまでに蓄積してきた家族に関する様々な問題・感情を主張する総決算の場であると認識していることがよくあります。

そのため、相続人が、家族に関するあらゆる問題をすべて解決しようと考えて行動し、問題が深刻化・複雑化・長期化することになります。

遺産分割にあたっては、どのような流れで、どのような問題を検討し、遺産分割以外にどのような手段を採るべきなのかを理解することが重要です。

遺産分割の流れ

遺産分割は、段階的に合意を積み重ねて、最終的な合意に至る手続きです。

遺産分割では、以下の項目を順番に検討し、それぞれの項目における各相続人の主張の調整をしながら、最終的な解決を目指します。

  1. 相続人を確定
  2. 遺産分割の対象を確定
  3. 遺産の評価額を確定
  4. 各相続人の取得額を確定
  5. 遺産分割の方法を確定
  6. 遺産分割協議書を作成

このような順番で問題点を整理することで、効率的な協議ができることになります。

遺産分割の流れについては、こちらのページで説明します。

遺産分割の対象

遺産分割の対象となるのは、死亡時に存在し、遺産分割の時にも存在している被相続人の財産のみです。

また、死亡時に存在し、遺産分割の時に存在する財産であっても、財産の性質によっては、遺産分割の対象にならないものもあります。

遺産分割の対象にならないものは、原則として遺産分割の中で扱うことはできません。

もっとも、遺産分割の対象にならないものであっても、遺産分割に付随する問題として、遺産分割協議・調停・審判それぞれの場面において、扱うことができることもあります。

遺産分割においてできることとできないことを区別したうえで、必要に応じて他の問題を検討することが重要です。

遺産分割においてできないことは、別途、訴訟手続きをせざるを得ないことによる時間・労力・費用の負担と遺産分割において譲歩することで解決することのどちらがよりよい解決になるのか検討することが必要です。

遺産分割の対象については、こちらのページで説明します。