相続土地国家帰属制度

現行の民法には、所有権のない不動産は国庫に帰属するという規定はあります(民法239条2項)。

もっとも、土地の所有権を放棄するなど、土地の所有権を手放すための制度はありません。

そこで、相続土地国家帰属法が制定され、法務大臣の行政処分により土地を国庫に帰属させることができるようになりました。

相続土地国家帰属法は、令和3年4月28日から2年以内に施行されます(相続土地国家帰属法附則1)。

国庫とは、財産権の主体としてとらえた場合の国のことです。

申請者

土地を国家に帰属させるための申請ができるのは、相続などにより土地を取得した所有者です(相続土地国家帰属法2条1項)。

相続などにより土地を取得する場合には、遺産分割・特定財産承継遺言・遺贈が含まれますが、遺贈については、受遺者が相続人の場合に限られます(相続土地国家帰属法1条)。

死因贈与、生前贈与、信託により土地を取得する場合は含まれません。

対象とならない土地

国庫に帰属させることのできない土地には、①そもそも承認申請自体ができない土地、⓶状況によっては申請が認められない土地、があります。

承認申請できない土地

次の土地については、申請自体をすることができません(相続土地国家帰属法2条3項各号)。

  1. 建物がある土地
  2. 担保権、使用・収益を目的とする権利が設定されている土地
  3. 道路など他人による使用が予定されているものが含まれる土地
  4. 土壌汚染がある土地
  5. 境界が明らかでない土地、所有権の存否・帰属・範囲に争いがある土地

土地の状況によって申請が認められない土地

次の土地については、承認申請はできるものの、管理・処分に過分の費用・労力を要する場合、国庫への帰属が認められません(相続土地国家帰属5条1項各号)。

管理・処分に過分の費用を要するか否かの判断は、所在地や周辺地の管理状況などをはじめ諸般の事情を総合的に考慮して判断されると考えられます。

  1. 崖がある土地のうち通常の管理に過分の費用・労力を要する土地
  2. 土地の通常の管理・処分を阻害する工作物・車両・樹木などの有体物がある土地
  3. 除去しなければ土地の通常の管理・処分を妨げる有体物が地下に存する土地
  4. 隣接する土地の所有者などとの争訟によらなければ通常の管理・処分ができない土地
  5. 通常の管理・処分に過分の費用・労力を要する土地

負担金

申請者は、承認審査のための手数料(相続土地国家帰属法3条2項)と国庫に帰属させる際の負担金(相続土地国家帰属法10条1項)を納付する必要があります。

負担金の額は、「国有地の種類ごとにその管理に要する10年分の標準的な費用の額を考慮して政令で定めるところにより算定した額」とされており(相続土地国家帰属法10条1項)、具体的な基準は定められていません。

この点、法務省の民事局長が、粗放的な管理で足りる原野なら10年分で20万円、200㎡程度の市街地である宅地なら80万円程度という目安を示しています。

効果

所有権の変動

法務大臣が承認処分という行政処分を行うことで、土地の所有権が国庫に帰属します。

承認処分があった場合は負担金を納付する必要があり(相続土地国家帰属法10条1項)、負担金が納付された時に所有権が国に移転します(相続土地国家帰属法11条1項)。

損害賠償責任

国家帰属の対象にならない土地(相続土地国家帰属法2条3項各号・5条1項各号)に該当することにより、国に損害が生じた場合、その事由を知りながら告げずに承認を受けた者は、国に対し、その損害を賠償する責任を負います(相続土地国家帰属法14条)。

手続の流れ

土地所有者による承認処分の申請

土地所有者が国庫への帰属を希望する場合、法務大臣に対し、土地の所有権を国家に帰属させるための承認申請をします(相続土地国家帰属法2条1項)。

承認処分は土地の筆ごとに行われるため、一筆の土地の一部について承認申請を希望する場合、分筆が必要になります。

共有地については、共有者の全員が共同して承認申請を行う必要があります(相続土地国家帰属法2条2項前段)。

共有者のうち、相続など以外の原因により共有持分を取得した者は、相続などにより共有持分を取得した共有者と共同して行う場合に限って承認請求ができます(相続土地国家帰属法2条2項後段)。

行政庁による承認処分

法務大臣は、審査を行い、承認されない土地に該当しない場合、承認をする必要があります(相続土地国家帰属法5条1項)。

土地所有者による負担金の納付

承認があった場合、承認申請者は、負担金を納付する必要があります(相続土地国家帰属法10条1項)。

承認申請者が負担金を納付した時に土地の所有権が国に移転します(相続土地国家帰属法11条1項)。