遺言には、自筆証書遺言(968条)、公正証書遺言(969条)、秘密証書遺言(970条、971条)などがあります。

このページでは、公証役場で作成する公正証書遺言について解説します。

条文の番号については、特に断りのない限り民法のものです。

公正証書遺言とは

公正証書遺言とは、遺言者が公証人の面前で遺言の内容を口授し、公証人が遺言者の真意を正確に文章にまとめ、公正証書として作成する遺言です(969条)。

公証人は、裁判官や検察官などをしていた法律実務の経験のある法務大臣に任命された公務員です。

公証人が執務する事務所が公証役場です。

公正証書遺言は、法律実務の専門家である公証人が作成に関わるため、方式の不備で遺言が無効になるおそれはありません。

また、公証役場に原本が保管されるため、遺言書が破棄されたり、隠匿や改ざんされたりするおそれもありません。

したがって、公正証書遺言は、自筆証書遺言と比べて、安全確実な遺言方法であるといえます。

さらに、公正証書遺言は、家庭裁判所で検認の手続を経る必要もないため(1004条2項)、相続開始後、速やかに遺言の内容を実現することができます。

公正証書遺言と自筆証書遺言の比較

公正証書遺言と自筆証書遺言の違いは以下のとおりです。

自筆証書遺言についてはこちらのページをご覧ください。

 自筆証書遺言公正証書遺言
作成時いつでも・どこでも作れる
費用がかからない
時間がかからない
文字を書ける必要がある
証人は不要
誰にも知られない
公証役場で作る
費用がかかる
時間がかかる
文字を書ける必要がない
証人が2人必要  
保管時紛失や偽造のおそれがある*紛失や偽造のおそれはない
死亡時不備により無効となるおそれがある
遺言を検索できない*
検認が必要*
不備により無効となるおそれがない
遺言を検索できる
検認は必要ない
*法務局で保管している場合は除きます

どのような点を重視するかによって、ふさわしい遺言を選択することになりますが、一般的には安全確実な公正証書遺言をお勧めします。

公正証書遺言の作成方法

事前に公証人との間で遺言の内容を打合せ、当日にその内容を確認して署名・押印し、完成させます。

事前準備

まず、公証役場に電話などで相談します。

公証役場は全国各地にありますが、どこの公証役場に相談しても差し支えありません。

公証人に作成したい遺言の内容を伝え、公証人に遺言の文案を作成してもらいます。

公正証書遺言の作成を依頼する場合、以下のような資料が必要になります。

  • 印鑑登録証明書(3か月以内)
  • 運転免許証・住基カードなど顔写真入りの公的機関の発行した証明書
  • 遺言者と相続人との続柄が分かる戸籍謄本
  • 財産を相続人以外に遺贈する場合、その方の住民票(法人の場合には登記簿謄本)
  • 財産の中に不動産がある場合、その登記簿謄本、固定資産評価証明書か固定資産税・都市計画税納税通知書中の課税明細書

遺言の内容に応じて、他にも資料が必要となる場合があります。

遺言の内容が決まったら、実際に公正証書を作成する日時を予約します。

作成当日

予約した日時に公正役場に行き、公正証書遺言を作成します。

遺言者が病気などで公証役場に行けない場合、公証人に自宅、病院、老人ホームなどまで来てもらうこともできます(別途手数料や日当、交通費がかかります。)。

作成当日には、証人2人の立会いが必要となりますので、証人2人にも公証役場に行ってもらいます。

未成年者、相続人・受遺者とその配偶者・直系血族などは証人になれません(974条)。

証人は、公証役場で紹介してもらうこともできます(別途証人の日当がかかります。)。

当日の作成の流れは以下のとおりです(969条)。

  • ​証人2人が立ち合い、遺言の内容を確認する
  • 公証人が遺言の内容を遺言者と証人に読み聞かせる
  • 遺言者と証人が遺言の記載が正確なことを確認し、署名・押印する
  • 公証人が方式に従って真正に作成された旨を付記し、署名・押印する

遺言作成者が病気などで署名できない場合、公証人がその旨を付記し署名に代えることができます(民法969条4号)。

また、口のきけない方や耳の聞こえない方も、公正証書遺言を作成することができます(969条の2)。

訂正の方法

公正証書遺言も、法律で定められた方式でいつでも撤回・変更できます。

公正証書遺言を自筆証書遺言で撤回・変更することもできますが、公証役場に再度相談し、公正証書遺言を撤回・変更することが望ましいです。

保管の方法

公正証書遺言の作成を依頼すると、原本・正本・謄本の3種類の書類が作成されます。

  • 原本
    公正証書遺言の原本は、遺言者本人、証人2名、公証人が署名・押印したものです。
    原本は公証役場で保管され、遺言者には交付されません。
  • 正本
    公正証書遺言の正本は、原本と同じ効力を持つ原本の写しです。
    正本は遺言者に交付されます。
    正本は、遺言者が死亡後、不動産の名義変更や預貯金の払戻しなどの手続きの際に利用します。
    正本を紛失した場合、公証役場で再発行してもらうことができます。
  • 謄本
    公正証書遺言の謄本は、原本と同じ効力を持たない原本の写しです。
    謄本は遺言者に交付されます。
    謄本を紛失した場合も、公証役場で再発行してもらうことができます。

公正証書遺言の調査

平成元年以降に作成された公正証書遺言は、遺言書検索システムを利用して、最寄りの公証役場から、どこの公証役場で作成されたものでも検索できます。

遺言者が死亡する前は、遺言者しか公正証書遺言の検索はできません。

遺言者が死亡した後は、相続人や遺言執行者も検索できます。

検索システムによってわかるのは、遺言の有無とどこの公証役場に保管されているのかだけで、遺言の内容まではわかりません。

そのため、遺言が保管されている公証役場が判明した場合、その公証役場に行き、公正証書遺言の謄本などを取得して内容を確認する必要があります。

手数料

遺言の目的となる財産の価額に応じて、概ね以下のように手数料が定められています。

目的の価額手数料
~100万円
5,000円
100万円超~200万円7,000円
200万円超~500万円11,000円
500万円超~1,000万円17,000円
1,000万円超~3,000万円23,000円
3,000万円超~5,000万円29,000円
5,000万円超~1億円
43,000円
1億円超~3億円
43,000円に超過額5,000万円ごとに13,000円を加算した額
3億円超~10億円
95,000円に超過額5,000万円ごとに11,000円を加算した額
10億円超
249,000円に超過額5,000万円ごとに8,000円を加算した額
全体の財産が1億円以下のときは、11,000円が加算されます。

具体的な額は、事前の打合せの際に公証役場から提示されます。

公証役場の場所

西東京市周辺の公証役場は、以下のとおりです。

武蔵野公証役場

武蔵野市吉祥寺本町2-5-11 松栄ビル4階
電話 0422-22-6606

練馬公証役場

練馬区豊玉北5-17-12 練馬駅前ビル3階
電話 03-3991-4871

杉並公証役場

杉並区天沼3-3-3 澁澤荻窪ビルディング4階
電話 03-3391-7100

所沢公証役場

所沢市西新井町20-10 西新井パークフラット
電話 04-2994-2323

立川公証役場

立川市柴崎町3-9-21 エルフレア立川ビル2階
電話 042-524-1279