株式の準共有

遺産に株式がある場合、遺産分割が終わるまで、株式は相続人が準共有することになります。

準共有とは、所有権以外の財産を共有することをいいます(民法264条本文)。

相続人が株式を準共有する場合、準共有者は、権利を行使する者 1人を定めて会社にその者の氏名又は名称を通知しなければ、 株式についての権利を行使できません (会社法106条本文)。

以下、株式の準共有者が株式についての権利を行使するにあたって問題となる点について説明します。

どのように権利行使者を定めるのか

権利を行使する者は、準共有者の持分(法定相続分)の価格に従い、その過半数で定めることになります(最高裁平成9年1月28日)。

▶最高裁平成9年1月28日

持分の準共有者間において権利行使者を定めるに当たっては、持分の価格に従いその過半数をもってこれを決することができるものと解するのが相当である。
けだし、準共有者の全員が一致しなければ権利行使者を指定することができないとすると、準共有者のうちの一人でも反対すれば全員の社員権の行使が不可能となるのみならず、会社の運営にも支障を来すおそれがあり、会社の事務処理の便宜を考慮して設けられた右規定の趣旨にも反する結果となるからである。

なお、権利を行使する者の指定を権利濫用とした裁判例もあります(大阪高判平成20年11月28日)。

▶大阪高判平成20年11月28日

被控訴人らは、…本件株式が準共有の状態となり、これが遺産分割が終了するまでの暫定的な事態にもかかわらず、この間に限り、前記のとおり、被控訴人らにおいてわずか400株[*発行済み株式は3万株だった。]の差で過半数を占めることとなることを奇貨とし、控訴人の経営を混乱に陥れることを意図し、本件抗告審決定で問題点を指摘されたにもかかわらず、権利行使者の指定について共同相続人間で真摯に協議する意思を持つことなく、単に形式的に協議をしているかのような体裁を整えただけで、実質的には全く協議をしていないまま、いわば問答無用的に権利行使者を指定したと認めるのが相当である。
そうとすれば、仮に一連の経緯のなかで、被控訴人らと…との間で協議が一応されたとみる余地があるとしても、…被控訴人らの本件株式についての権利行使者を被控訴人…とする指定は、法の定める手続を無視すると同様な行為と評価せざるを得ず、もはや権利の濫用であって、許されないものといわざるを得ない。

権利行使者を定めずに権利行使できるか

権利を行使する者を定めて会社にその者の氏名等を通知しなくても、特段の事情が認められる場合、例外的に権利行使できるとした裁判例があります。

  • 株式を準共有する共同相続人間において商法203条2項にいう「株主ノ権利ヲ行使スベキ者」の指定及び会社に対する通知を欠く場合であっても、右株式が会社の発行済株式の全部に相当し、共同相続人のうちの1人を取締役に選任する旨の株式総会決議がされたとしてその旨登記されているときは、他の共同相続人は、右決議の不存在確認の訴えにつき原告適格を有する(最高裁平成2年12月4日)。
  • 合併当事会社の株式を準共有する共同相続人間において商法203条2項にいう「株主ノ権利ヲ行使スベキ者」の指定及びその旨の会社に対する通知を欠く場合であっても、右株式が一方の会社の発行済株式総数の過半数を占めているのに合併契約書の承認決議がされたことを前提として合併の登記がされているときは、共同相続人は、右決議の不存在を原因とする合併無効の訴えの原告適格を有する(最高裁平成3年2月19日)。

▶最高裁平成2年12月4日

株式を相続により準共有するに至った共同相続人は、商法203条2項の定めるところに従い、右株式につき「株主ノ権利ヲ行使スベキ者一人」(以下「権利行使者」という。)を定めて会社に通知し、この権利行使者において株主権を行使することを要するところ(最高裁昭和…45年1月22日…)、右共同相続人が準共有株主としての地位に基づいて株主総会の決議不存在確認の訴えを提起する場合も、右と理を異にするものではないから、権利行使者としての指定を受けてその旨を会社に通知していないときは、特段の事情がない限り、原告適格を有しないものと解するのが相当である。

しかしながら、株式を準共有する共同相続人間において権利行使者の指定及び会社に対する通知を欠く場合であっても、右株式が会社の発行済株式の全部に相当し、共同相続人のうちの一人を取締役に選任する旨の株主総会決議がされたとしてその旨登記されている本件のようなときは、前述の特段の事情が存在し、他の共同相続人は、右決議の不存在確認の訴えにつき原告適格を有するものというべきである。
けだし、商法203条2項は、会社と株主との関係において会社の事務処理の便宜を考慮した規定であるところ、本件に見られるような場合には、会社は、本来、右訴訟において、発行済株式の全部を準共有する共同相続人により権利行使者の指定及び会社に対する通知が履践されたことを前提として株主総会の開催及びその総会における決議の成立を主張・立証すべき立場にあり、それにもかかわらず、他方、右手続の欠缺を主張して、訴えを提起した当該共同相続人の原告適格を争うということは、右株主総会の瑕疵を自認し、また、本案における自己の立場を否定するものにほかならず、右規定の趣旨を同一訴訟手続内で恣意的に使い分けるものとして、訴訟上の防御権を濫用し著しく信義則に反して許されないからである。

▶最高裁平成3年2月19日

株式を相続により準共有するに至った共同相続人は、商法203条2項の定めるところに従い、右株式につき「株主ノ権利ヲ行使スベキ者一人」(以下「権利行使者」という)を定めて会社に通知し、この権利行使者において株主権を行使することを要するところ(最高裁昭和45年1月22日…)、右共同相続人が準共有株主としての地位に基づいて同法415条による合併無効の訴えを提起する場合も、右と理を異にするものではないから、権利行使者としての指定を受けてその旨を会社に通知していないときは、特段の事情がない限り、原告適格を有しないものと解するのが相当である。

しかしながら、合併当事会社の株式を準共有する共同相続人間において権利行使者の指定及び会社に対する通知を欠く場合であっても、共同相続人の準共有に係る株式が双方又は一方の会社の発行済株式総数の過半数を占めているのに合併契約書の承認決議がされたことを前提として合併の登記がされている本件のようなときは、前述の特段の事情が存在し、共同相続人は、右決議の不存在を原因とする合併無効の訴えにつき原告適格を有するものというべきである。
けだし、商法203条2項は、会社と株主との関係において会社の事務処理の便宜を考慮した規定であるところ、本件に見られるような場合には、会社は、本来、右訴訟において、株式を準共有する共同相続人により権利行使者の指定及び会社に対する通知が履践されたことを前提として、合併契約書を承認するための同法408条1項、三項所定の株主総会の開催及びその総会における同法343条の規定による決議の成立を主張・立証すべき立場にあり、それにもかかわらず、他方、右手続の欠缺を主張して、訴えを提起した当該共同相続人の原告適格を争うということは、右株主総会の瑕疵を自認し、また、本案における自己の立場を否定するものにほかならず、同法203条2項の規定の趣旨を同一訴訟手続内で恣意的に使い分けるものとして、訴訟上の防御権を濫用し著しく信義則に反して許されないからである。

共有者間での取り決めにより権利行使を制限できるか

権利行使者1 人を決めて会社に通知した場合、その者が議決権の正当な行使者となるので、準共有者間で総会の決議事項について逐ー合意を要するとの取決めがあり、ある事項について準共有者間に意見の相違がある場合でも、権利行使者は自己の判断で議決権を行使できます(最高裁昭和53年4月14日)。

▶最高裁昭和53年4月14日

有限会社において持分が数名の共有に属する場合に、その共有者が社員の権利を行使すべき者一人を選定し、それを会社に届け出たときは、社員総会における共有者の議決権の正当な行使者は、右被選定者となるのであって、共有者間で総会における個々の決議事項について逐一合意を要するとの取決めがされ、ある事項について共有者の間に意見の相違があっても、被選定者は、自己の判断に基づき議決権を行使しうると解すべきである。

会社が同意すれば権利行使できるか

権利行使者を定めて会社に通知することが必要となるのは、会社の事務処理上の便宜のためであるため、会社が同意すれば、権利行使者を定めて会社に通知しなくても準共有者による権利行使が認められます(会社法106条但書)。

もっとも、会社法106条本文の規定に基づく指定及び通知を欠いたまま株式についての権利が行使された場合において、当該権利の行使が民法の共有に関する規定に従ったものでない(持分の価格に従いその過半数で決められていない)ときは、会社が会社法106条但書の同意をしても,当該権利の行使は適法となるものではないとした裁判例があります(最高裁平成27年2月19日)。

▶最高裁平成27年2月19日

会社法106条本文は、…共有に属する株式の権利の行使の方法について、民法の共有に関する規定に対する「特別の定め」(同法264条ただし書)を設けたものと解される。その上で、会社法106条ただし書は、「ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。」と規定しているのであって、これは、その文言に照らすと、株式会社が当該同意をした場合には、共有に属する株式についての権利の行使の方法に関する特別の定めである同条本文の規定の適用が排除されることを定めたものと解される。
そうすると、共有に属する株式について会社法106条本文の規定に基づく指定及び通知を欠いたまま当該株式についての権利が行使された場合において、当該権利の行使が民法の共有に関する規定に従ったものでないときは、株式会社が同条ただし書の同意をしても、当該権利の行使は、適法となるものではないと解するのが相当である。
そして、共有に属する株式についての議決権の行使は、当該議決権の行使をもって直ちに株式を処分し、又は株式の内容を変更することになるなど特段の事情のない限り、株式の管理に関する行為として、民法252条本文により、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決せられるものと解するのが相当である。

…これを本件についてみると、本件議決権行使は会社法106条本文の規定に基づく指定及び通知を欠いたままされたものであるところ、本件議決権行使の対象となった議案は、①取締役の選任、②代表取締役の選任並びに③本店の所在地を変更する旨の定款の変更及び本店の移転であり、これらが可決されることにより直ちに本件準共有株式が処分され、又はその内容が変更されるなどの特段の事情は認められないから、本件議決権行使は、本件準共有株式の管理に関する行為として、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決せられるものというべきである。
そして、…本件議決権行使をしたBは本件準共有株式について2分の1 の持分を有するにすぎず、また、残余の2 分の1 の持分を有する被上告人が本件議決権行使に同意していないことは明らかである。そうすると、本件議決権行使は、各共有者の持分の価格に従いその過半数で決せられているものとはいえず、民法の共有に関する規定に従ったものではないから、上告人がこれに同意しても、適法となるものではない。

…以上によれば、本件議決権行使が不適法なものとなる結果、本件各決議は、決議の方法が法令に違反するものとして、取り消されるべきものである。