養子縁組の無効

養子縁組をして養子になると、養親の嫡出子となり(民法809条)、養親の相続人となります。

養子縁組によって、他の相続人にとっては相続人が増える結果、相続分が減ることになります。

そのため、被相続人の死亡後、養子となった相続人について、被相続人の意思によらずに養子縁組が行われたなどと主張され、養子縁組の効力が争われることがあります。

養子縁組が無効となる原因

養子縁組の意思のない縁組は無効となります。

養子縁組の意思としては、次の意思が必要です。

  • 当事者間に養親子関係を設定する意思(最高裁昭和23年12月23日、東京高裁昭和60年5月31日)
  • 養子縁組の届出をする意思

したがって、どちらかの意思がない場合、養子縁組は無効となります。

この点、他の相続人の相続分を排することを主たる目的としなされた養子縁組であっても、親子としての精神的つながりをつくる意思が認められるかぎり無効ではないとした裁判例があります(最高裁昭和38年12月20日)。

また、養子縁組の意思で、他人の子を嫡出子として届出ても、それによって養子縁組が成立することはないとする裁判例があります(最高裁昭和25年12月28日、最高裁昭和50年4月8日、最高裁昭和56年6月16日)。

追認

養子縁組の意思がなく、無効な養子縁組でも、追認があれば有効になります(最高裁昭和27年10月3日、最高裁昭和39年9月8日)。

追認は、明示のものでも黙示のものでも構いません。

そのため、養子縁組が無効でも、その後、社会通念上の親子と同様の生活の実態があった場合、追認があったと扱われることもあると考えられます。

<最高裁昭和27年10月3日>

旧民法843条の場合につき民法は追認に関する規定を設けていないし、民法総則の規定は、直接には、親族法上の行為に適用を見ないと解すべきであるが、15歳未満の子の養子縁組に関する、家に在る父母の代諾は、法定代理に基くものであり、その代理権の欠缺した場合は一種の無権代理と解するを相当とするのであるから、民法総則の無権代理の追認に関する規定、及び前叙養子縁組の追認に関する規定の趣旨を類推して、旧民法843条の場合においても、養子は満15歳に達した後は、父母にあらざるものの自己のために代諾した養子縁組を有効に追認することができるものと解するを相当とする。
しかして、この追認は、前示追認と同じく何らその方式についての規定はないのであるから、明示若しくは黙示をもってすることができる。
その意思表示は、満15歳に達した養子から、養親の双方に対してなさるべきであり、養親の一方の死亡の後は、他の一方に対してすれば足るものであり、適法に追認がなされたときは、縁組は、これによつて、はじめから、有効となるものと解しなければならない。

手続き

養子縁組の無効を確認する訴えを提起するためには、原則として家庭裁判所に調停の申立てをしなければなりません(家事事件手続法257条1項)。