相続登記の申請義務化

相続登記を申請することは義務ではなく、相続登記をするかどうかは相続人の自由でした。

しかし、不動産登記法が改正され、今後は、相続登記の申請が義務になりました(改正不動産登記法76条の2)。

登記の申請は、相続が開始したときと遺産分割をしたときの2段階において必要となります。

改正不動産登記法は令和3年4月28日に公布され、公布から3年以内に施行されることになっていましたが(民法等の一部を改正する法律附則1条但書2号)、「民法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」(令和3年12月14日閣議決定)により、令和6年4月1日に施行されることになりました。

これらの規定は、改正不動産登記法の施行日前に相続が開始していた場合にも遡及して適用されるため(民法等の一部を改正する法律附則5条6項)、法改正によるインパクトは大きなものになると考えられます。

相続が開始したとき(第1段階)

不動産の所有権の登記名義人に相続が開始した場合、相続人に相続登記の申請などの義務が発生します。

義務の具体的な内容は、次のとおりです(改正不動産登記法76条2第1項・76条の3第1項・第2項・164条1項)。

  • 義務を負う者:相続・遺贈により不動産の所有権を取得した相続人
  • 義務の履行期間:自己のために相続開始があったことを知り、かつ、不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内
  • 義務の履行方法:相続・遺贈を原因とする所有権移転登記か相続人申告登記
  • 義務違反の効果:正当な理由がある場合を除き10万円以下の過料

* 過料とは、行政上の秩序の維持のために、裁判所が違反者に対して制裁として金銭的負担を課すものです。刑事裁判における罰金刑とは異なり前科にはなりません。

相続人申告登記とは、相続登記の申請義務を負う者が、登記官に対し、①登記名義人に相続が開始したこと、②自らが相続人であることを申し出ることにより、相続登記の申請義務を果たしたことになる制度です(改正不動産登記法76条の3第1項・第2項)。

相続人申告登記は、相続を原因とする所有権の移転の登記ではなく、相続があったことの申告に関する登記にすぎず、「付記●号」「相続人申告」という形で登記されます(改正不動産登記法76条の3第3項)。

これらの規定は、改正不動産登記法の施行日前に相続が開始していた場合にも遡及して適用されます。

具体的には、改正不動産登記法76条の2の施行日より前に、所有権の登記名義人について相続の開始があった場合、相続人は、次のどちらか遅い日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請する必要があります(民法等の一部を改正する法律附則5条6項)。

  • 自己のために相続開始があったことを知り、かつ、不動産の所有権を取得したことを知った日
  • 改正不動産登記法76条の2の施行日

遺産分割をしたとき(第2段階)

相続登記をした後(第1段階の義務を果たした後)に遺産分割をした場合、遺産分割によって相続分を超えて所有権を取得した者には、所有権移転登記を申請する義務が発生します。

義務の具体的な内容は、次のとおりです(改正不動産登記法76条の2第2項・76条の3第4項・164条1項)。

  • 義務を負う者:遺産分割により所有権を取得した者
  • 義務の履行期間:遺産分割から3年以内
  • 義務の履行方法:遺産分割を原因とする所有権移転登記の申請
  • 義務違反の効果:正当な理由がある場合を除き10万円以下の過料

これらの規定は、改正不動産登記法の施行日前に相続が開始していた場合にも遡及して適用されます。

具体的には、改正不動産登記法76条の2の施行日より前に、所有権の登記名義人について相続の開始があった場合、相続により所有権を取得した者は、次のどちらか遅い日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請する必要があります(民法等の一部を改正する法律附則5条6項)。

  • 遺産分割の日
  • 改正不動産登記法76条の2の施行日