一部分割

通常、すべての遺産について遺産分割をしますが、遺産の一部についてだけ遺産分割をすることもできます。

このページでは、遺産の一部についてだけ遺産分割をする一部分割について説明します。

条文の番号は、特に断りのない限り民法のものです。

一部分割とは

一部分割とは、遺産の一部を、他の遺産から独立させて、遺産分割することをいいます。

相続人は、いつでも、遺産の一部を他の遺産から独立させて、遺産分割の協議をすることができます(907条1項)。

また、家庭裁判所に一部分割の調停・審判の申立てをすることもできます(907条2項本文、家事事件手続法73条2項本文)。

一部分割の規定は民法の改正により創設されたもので、令和元年7月1日から適用され、それ以前に開始した相続には適用されません(附則2条)。

もっとも、民法が改正される前にも、一部分割は行われていました。

一部分割できない場合

他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合、一部分割の申立てはできません(907条2項但書)。

他の共同相続人の利益を害するかどうかは、一部分割をすることにより、最終的に適正な分割を達成できる見込みのある場合であるかどうかが基準となります。

したがって、特別受益があるかどうかを検討し、代償金の支払が確保されるか、どのような分割方法とするかも検討したうえで、最終的に適正な分割を達成できる明確な見通しが立たない場合、一部分割はできないと考えられます。

残りの遺産分割への影響

遺産の一部だけを分割する場合、以下のことを明確にする必要があります。

  • 遺産の一部の分割であること
  • 一部の分割が他の遺産の分割に影響があるのかないのか

残りの遺産分割に影響させない場合

例えば、被相続人Aの遺産1~3のうち、遺産1・2について一部分割を行い、遺産3の遺産分割に影響させない場合、遺産分割協議書や調停条項に以下のように記載することが考えられます

第●項 相続人全員は、別紙遺産目録記載3の遺産について、上記の遺産分割とは別個独立にその相続分に従って分割することとし、上記遺産の一部分割がその余の遺産分割に影響を及ぼさないことを確認する。

残りの遺産分割に影響させる場合

例えば、被相続人Aの遺産1~3のうち、遺産1・2について一部分割を行い、遺産3の遺産分割に影響させる場合、遺産分割協議書や調停条項に以下のように記載することが考えられます。

第●項 相続人全員は、前項により、相続人Bが●万円、相続人Cが●万円を取得したことを確認する。
第●項 相続人全員は、別紙遺産目録記載3の遺産分割について、次のとおり分割することを確認する。
⑴ 残余の遺産分割においては、別紙遺産目録記載1・2の遺産を含めて、遺産の総額を評価する。
⑵ その総額に各共同相続人の法定相続分を乗じて算定された具体的相続分(特別受益・寄与分による修正を含む。)から、前項により取得した遺産額を控除して共同相続人の残余の遺産に対する具体的相続分率を算出する。

残りの遺産分割に影響するか明らかでない場合

遺産の一部だけを分割する場合、残りの遺産分割に影響するかどうかを遺産分割協議書などにおいて明確にする必要がありますが、遺産の一部分割が残りの遺産分割に影響するのかないのかはっきりしない場合もあります。

この点、残りの遺産分割において、①残りの遺産についてのみ法定相続分に従った分割で足りるか、②一部分割における不均衡を残りの遺産分割において修正して遺産全部について法定相続分に従った分割を行うか、については一部分割の際の当事者の意思表示の解釈により定まるとした裁判例があります(東京家裁昭和47年11月15日)。

具体例

例えば、被相続人Aが死亡し、遺産が甲不動産(3000万円)、乙預金(1000万円)の場合において、相続人が妻B、長男C、長女Dのとき、Dが遺産分割協議により乙預金を取得した後、甲不動産の遺産分割する例では、以下のようになります。

影響しないと考える場合

甲不動産の遺産分割には、Dが乙預金を取得したことは影響しないため、最終的な取得額は、以下のようになります。

B 甲不動産の持分1/2(1500万円)
C 甲不動産の持分1/4(750万円)
D 甲不動産の持分1/4(750万円)+乙預金(1000万円)=1750万円

影響すると考える場合

甲不動産の遺産分割には、Dが乙預金を取得したことが影響します。

具体的には、一部分割における相続人の法定相続分との過不足を残りの遺産分割において修正します(前掲東京家庭裁判所昭和47年11月15日、大阪家庭裁判所昭和51年11月25日)。

したがって、最終的な取得額は、以下のようになります。

B 甲不動産の持分2/3(2000万円)
C 甲不動産の持分1/3(1000万円)
D 乙預金(1000万円)