遺産分割の方法には、次のような方法があります。

  • 現物分割:遺産を相続分に応じて物理的に分ける方法
  • 代償分割:相続人のひとりが遺産を取得し、他の相続人に代償金(相続分を超える分の金額)を支払う方法
  • 換価分割:遺産を売却して、売却代金を相続分に応じて分ける方法
  • 共有分割:遺産を相続人が相続分に従って共有する方法

現物分割

現物分割は、遺産を相続分に応じて物理的に分ける方法です。

相続人は、遺産の形状や性質を変えずに取得します。

例えば、相続人Bが不動産、相続人Cが預貯金、相続人Dが株式を取得するような場合です。

分筆が可能な土地であれば、土地を分筆して各相続人が相続分に応じて取得することもできます。

なお、単位株制度の適用のある株式の場合、新たに単位未満株式を生じさせる現物分割はできません(最高裁平成12年7月11日参照)。

代償分割

代償分割は、相続人のひとりが遺産を取得し、他の相続人に代償金(相続分を超える分の金額)を支払う方法です。

例えば、相続人Bが不動産(2000万円)を取得し、相続人Cに対して1000万円を支払うような場合です。

遺産分割審判の場合、特別の事情があると認めるときに、現物分割に代えて代償分割を行うことができます(家事事件手続法195条)。

特別の事情があるといえるためには、代償金の支払いをする相続人に金銭の支払能力のあることが必要です(最高裁平成12年9月7日)。

遺産分割調停・審判では、支払能力を証明するため、預貯金の残高証明書や預貯金通帳の写しの提出が求められます。

また、代償金は一括払いが原則ですが、遺産分割協議・調停では分割払いとすることもできます。

換価分割

換価分割は、遺産を売却して、売却代金を相続分に応じて分ける方法です。

例えば、相続人B・Cが不動産を売却し、売却代金から売却にかかった費用を差し引いた金額を1/2ずつ分けるような場合です。

現物取得が困難な遺産について、代償金の支払能力の不足や取得希望者がいないために代償分割もできない場合に、換価分割を検討することになります。

換価の方法には、任意売却と競売がありますが、任意売却の方が高額での売却が期待できます。

もっとも、任意売却には相続人間の協力が必要であり、次のような取り決めを事前にしておくことも考えられます。

  • 最低売却価額
  • 売却期限
  • 売却担当者
  • 売却代金から控除する費用
  • 相続登記・所有権移転登記費用や司法書士費用の清算方法
  • 売却できなかった場合の対応
  • 各相続人が手続きに協力する内容

共有分割

共有分割は、遺産を相続人が相続分に従って共有する方法です。

例えば、不動産について、相続人B・Cが1/2ずつの共有持分を取得するような方法です。

共有分割により各相続人が共有持分を持つことが確定した場合、その後に共有関係を解消するには、遺産分割ではなく共有物分割(民法256条)が必要となります。

共有関係を解消する方法についてはこちらのページで説明します。

選択の順序

遺産分割の方法は、協議・調停では、相続人が合意をすればどの方法にするかを自由に決めることができます。

もっとも、審判では、現物分割→代償分割→換価分割→共有分割の順番で検討することになります(大阪高裁平成14年6月5日)。

<大阪高裁平成14年6月5日>

遺産分割は、共有物分割と同様、相続によって生じた財産の共有・準共有状態を解消し、相続人の共有持分や準共有持分を、単独での財産権行使が可能な権利(所有権や金銭等)に還元することを目的とする手続であるから、遺産分割の方法の選択に関する基本原則は、当事者の意向を踏まえた上での現物分割であり、それが困難な場合には,現物分割に代わる手段として、当事者が代償金の負担を了解している限りにおいて代償分割が相当であり、代償分割すら困難な場合には換価分割がされるべきである。
共有とする分割方法は、やむを得ない次善の策として許される場合もないわけではないが、この方法は、そもそも遺産分割の目的と相反し、ただ紛争を先送りするだけで、何ら遺産に関する紛争の解決とならないことが予想されるから、現物分割や代償分割はもとより、換価分割さえも困難な状況があるときに選択されるべき分割方法である。