遺贈

遺言により財産を他人に与える遺贈について説明します。

特に断りのない限り、条文の番号は民法のものです。

遺贈とは

遺贈とは、遺言により、無償で、自己の財産を他人に与える行為です。

遺言により行われることから、遺言の方式に従わないと遺贈は無効になります。

財産を与えられる他人は、相続人でも相続人以外でも差し支えありません。

遺贈により財産を与えられた者を受遺者といいます。

相続人に対して財産を与える際によく利用される「相続させる遺言」は、原則として遺産分割方法の指定となり(最高裁平成3年4月19日)、遺贈とはなりません。

相続させる遺言については、こちらのページをご覧ください。

遺贈には、特定遺贈と包括遺贈があります。

特定遺贈

特定遺贈とは

特定遺贈とは、遺言により、無償で、自己の特定の財産を他人に与える行為です。

例えば、「甲不動産をBに遺贈する」との遺言は特定遺贈となります。

特定遺贈の効力

遺言は、遺言者の死亡の時から効力を生じます(985条1項)。

したがって、遺贈の対象となる財産は遺贈の効力発生と同時に受遺者に移転し(大審院大正5年1月8日)、その財産は遺産分割の対象とはなりません。

もっとも、遺贈による権利の取得を第三者に対応するには、対抗要件を備える(権利移転の登記など)ことが必要です(最高裁昭和39年3月6日)。

例えば、Aが甲不動産をBに遺贈するとの遺言を残して死亡した場合、Aの死亡により(遺産分割をしなくても)Bは甲不動産を取得しますが、第三者に甲不動産の取得を対抗するためには、登記をすることが必要です。

特定遺贈の場合、包括遺贈と異なり、権利だけが受遺者に与えられます。

特定遺贈の放棄

受遺者は、いつでも遺贈を放棄できます(986条1項)。

遺贈を放棄する場合、遺贈義務者か遺言執行者に対する意思表示をします。

相続放棄と異なり、家庭裁判所への申述は不要です。

特定遺贈の放棄により、遺言者が死亡した時にさかのぼって遺贈がなかったことになります(986条2項)。

したがって、Aが甲不動産をBに遺贈するとの遺言を残して死亡した場合、Aの死亡により(遺産分割をしなくても)Bは甲不動産を取得しますが、Bが遺贈を放棄すると、Bは甲不動産を最初から取得しなかったことになります。

包括遺贈

包括遺贈とは

包括遺贈とは、遺言により、無償で、自己の財産の全部又は一定の割合を、他人に与える行為です。

包括遺贈は、特定遺贈と異なり、権利だけでなく義務も受遺者が取得します。

包括遺贈には、全部包括遺贈と割合的包括遺贈があります。

全部包括遺贈

全部包括遺贈とは、遺言により、無償で、自己の財産の全部を、他人に与える行為です。

例えば、「全部の財産をCに遺贈する」という遺言は全部包括遺贈となります。

全部の財産が包括遺贈されると、遺産分割の対象となる財産はなくなります。

割合的包括遺贈

割合的包括遺贈とは、遺言により、無償で、自己の財産の一定の割合を、他人に与える行為です。

例えば、「相続人以外のEに財産の1/3を包括して遺贈する」との遺言を残してAが死亡し、Aの相続人が妻B、子C・Dのときは、Eの相続分を1/3として遺産分割を行います。

包括遺贈の効力

包括受遺者には、相続人と同一の権利義務があります(990条)。

相続人以外が包括受遺者になった場合、新たに与えられた相続分を有する相続人が現れたことになり、遺産分割にも相続人と同じ立場で参加することになります。

また、包括遺贈の放棄・承認は、遺贈の放棄・承認(986条~989条)ではなく相続の放棄・承認(915条~919条)として扱います。

したがって、相続人以外のEが包括受遺者となった場合、Aの死亡と自分が包括受遺者であることを知った時から3か月以内に放棄をしなければならず(915条1項)、放棄をしないまま期間が経過すれば包括遺贈を承認したことになります(921条柱書・2項)。

包括受遺者と相続人との違い

包括受遺者には相続人と同一の権利義務がありますが、以下のような違いもあります。

包括受遺者相続人
法人なれるなれない
代襲制度なしあり
遺留分なしあり

遺贈と死因贈与との違い

死因贈与とは、贈与者が生前に契約した、贈与者の死亡を条件に効力が生じる贈与です。

死因贈与は、無償で財産を与える点では遺贈に似ているため、以下のような遺贈に関する規定が準用されます(554条)。

  • 遺言は遺言者の死亡の時から効力を生じる(985条1項)
  • 受遺者が遺言者の死亡前に死亡した場合は効力を生じない(994条1項)

死因贈与には、遺言の撤回に関する民法1022条もその方式に関する部分を除いて準用され(最高裁昭和47年5月25日)、死因贈与をした者は、いつでも死因贈与の全部または一部を撤回できます。

もっとも、遺言は遺言者の一方的な意思表示であるのに対し、死因贈与は贈与者と受贈者による契約であることから、以下のような規定は準用されません。

  • 死因贈与には遺言の方式に関する規定(967条以下)
  • 遺言の能力(961条)
  • 遺贈の放棄・承認(986条以下)